2008年09月11日(木)

fire  仮面  fire

  仮面  18歳だったか

19歳だったか

もう覚えていないのだが、確かその頃買った一冊の雑誌が
今も我が家の書棚にある。














美術雑誌なのだが

内容に惹かれて買ったわけではない
ただ表紙の絵が、なんとなく気にかかり買ってしまった。

ジェームズ・アンソール。

仮面の画家。


今もって特別好きな画家という事ではない。絵もさほど好みでもない。
しかし、なんというのだろうか?ある一定の期間を置くと、不思議と
手にとる雑誌となっている。

このアンソール、正直、19世紀から20世紀にかけて活躍した他の画家に
比べ、日本ではあまり知られていないのではないだろうか?

しかし、不思議なことに、何年かに一度、僅かだが国内のメディアにフワッと姿を現し、さしたるブームや注目を浴びることもなく、またシューと消えていく。。
最近もどこかのテレビで特集をしていたようだが、残念ながら見られなかった。

実は私、この2,3年前であるが、このアンソールのことが少し分かったような気がしたのである。

なにが分かったか?

少し強引な論法ではあるが、この画家が描いた“仮面”や“骸骨”の絵は、
21世紀、今の現代美術までに相当な太い線で繋がっているのではないか?という仮想だ。

様々な経過が現代まで繋がり、現時点での表現の主流(幾重にも別れてはいるが)が確立されているのだが、なんとなくこの画家が示したものが、実は様々な各時代背景を色濃く反映した同時代表現よりも数段普遍的な人間の本質を示したのではないか?と私は思えたのである。ある意味誰よりも核心的な表現ではないかと考えている。

仮面をメインモチーフにしているものが現在も評価が高いのであるが、この仮面、洋の東西を問わず案外芸術にとっては重要な小物になる。日本ではその最高な部分が“能”という独特の表現になるのだろうが、西洋にとっても仮面はかなり歌劇などやその他の表現で使用されていると思うのである。

日本では、三島由紀夫が“仮面の告白”という小説を書いているが、仮面という物質を媒介させることによって、人間の内と外、また人間を取り巻く環境と自分という相反するものを象徴的に取りまとめ集約し表現する役割をこの物質は強烈に持ちあわせており、その上で表現者の想像を遥かに越えるくらいの威力を発揮するように思えるのである。あえて表情がない仮面をつけて演じることにより、より内面から彷彿とする感情が燃え立ち、見る人間の想像を大きく増幅させる。また仮面という部分に肉体的に目視できる自分と向き合う見えない内なる自分を仮託することにより、霊的な独白を吐露させるというような効果も生み出せる。実に不思議なアイテムであり、その物質をメインに使い描いたアンソールの絵は、様々な画家か試みた人間観察よりもより普遍性があり、核心的であるように私は感じたのである。

そのアイテムをメインに使用するからアンソールは普遍的であり
現代美術に直結するのでは?というのではない。

この人間が描いた仮面とは、本質的に我々が固定観念で堅持している
ものとは違うのではないか?ということに気が付き、そこから考えられる
部分が実は現代美術まで繋がる太い線なのではと感じたのである。

仮面とは通常、嘘の自分を示すものと我々は捉えていないだろうか?
そして仮面の内側にある自分が本当の自分であり、真の自分だというのが
大半がイメージするところではないのだろうか?

しかし、これは本当にそうなのだろうか?

仮面こそが真の自分の姿ではないのか?という単純な逆説を考えて
貰いたい。

例えば分かり安く考えれば、社会に出て活動している自分には何枚もの
仮面をもって居る筈である。サラリーマン、主婦、社長、等々色々あると
思うのであるが、これを考える時、実は自分はその仮面とは違うという常に
違和感を持ち、真の自分探しなんどという心地よい言葉に良く酔わないだ
ろうか?

しかし、現実に自分を形どり、客観的に浮き上がる自分とは“仮面の自分”でしかないと直視できないだろうか?

人が一生を終えたとき、他人がその人間を語る場合、仮面を語りはしないだろうか?

あの世から“俺は本当は違うんだ”という事を叫んだとしても、勝手に
一人歩きする自分とは“仮面の自分”なのではないかと思うのである。

ここが実に重要なのであるが、人間社会で生活を送る場合、仮面の自分こそが実は、真の自分であり、間違いなく自分で作った自分なのである。仮に真の自分という内側にある自分で生きた場合、どうなるのであろうか?できるだろうか?

内なる自分を剥き出しにできるか?なぜしないのか?なによりも真の自分と固執している部分がなにか?それを具体的に示すものはなにか?

ここが本質なのではないか、いつも主観的に勝手な解釈を施すが
客観的、そう、社会という全体から自分を見つめた場合、仮面の自分以外に見えるものはない!

と思うのである。仮に自分を剥き出しにした場合、社会は受け入れてくれるだろうか?仮面の自分を作りだせない人間は社会から虐められないか?蔑まれたりしないか?仮面に逃げ込むという考え方もあるが、実はそれこそが人間そのものの本質的行動であり、実は真の自分なのではないだろうか?


仮面の内側の自分が真実などと考えるのは妄想でしかなく、見えない自分とは実は“嘘の自分”に他ならないのではないか?という事である。悲しいかな、人間はあくまで仮面をかぶった真の自分で生きていくしかなく、内側にある“嘘の自分”と語り続けなくてはいけない存在なのではないのだろうか?

私はアンソールの絵を見たときそのような感覚が押し寄せてきたのである。

私はそう言う意味で、奈良美智は“仮面の画家”だと思うのである。
可愛い子供の顔につりあがった憎悪を滲ませた視線。

子供に嘘の目を描いているのか?
違うと思う。真実の目を描いている、真実の仮面なのだと思う。
大人が勝手に想像している子供の内側に対して違和感を感じるのだろう
が、実はそれは“嘘の子供”であり、真実は鋭い視線を持った

子供の仮面なのだ。

ここにアンソール的な仮面の告白があるような気がするのである。

これはもっと社会が混乱や過渡期にさしかかった場合顕著に
表れる論旨ではないかと考えている。

パラダイムシフトが起こった場合、それまでの仮面で生きるか
それとも違う仮面に被りなおすか?これほど真の自分というものを
示す例はないと思うのである。

軍国主義から民主平和主義へ

この時仮面を被りなおせるものとそうでない者がいるだろう。
しかし、内なる自分などと言う物は、元来どうでも良い事の
ような気がするのである。仮面こそが社会の中での真の自分
になるだろう。

現在、中国で活躍する現代美術のスーパースター達は、私が見る限り
大半が“仮面の画家”である。

同じ仮面、同じ顔の人間達が怒ったような笑ったような、そう明確でない
表情、ある種無機質な人形のような人物像を描き出している。

これから読み解けるのは、国家は共産主義、経済は資本主義、というネジレた
イデオロギーの中、数年前は民主化を叫びある者は当局に逮捕され、ある者は
国外に追放や逃亡という絶望的な状況があり、その清算・検証はなにもなされないまま、暴虐武人にも、それからそう時間が経っていない現在、政治的な不整合部分には蓋をしたまま経済は未曾有の好況を博し、過去無いくらいの飽食な環境が出現し、生活は平均的に豊かに変貌したのである。

この間の事を国民はどう理解したらよいのか?

何が幸せなのか?

突如金持ちになってハッピーだけど…
あの民主化に揺れた部分はなんなのだろう?

しかし現実の仮面は現状を肯定している。

仮面の人物像とは真の自分という表現では少し分かりにくくなるだろうから
あえて現実の自分という解釈にすれば分かりやすいのかもしれない。

もろもろあるが、全体主義で経済を背景に幸福なのだからOKという部分に
甘んじている?いや、受け止めている現実の自分がいるという解釈が成立
するのではないかと私は考えている。そしてその説明的な意味の補足として
実にこの国の現代美術の作家は“毛沢東”の肖像を多用する。

この毛沢東ですら、私は現代の仮面なのではないか?と考えているのである。

毛沢東が国家の創始者と位置付けた場合、その毛沢東が目指した国家と現在の
国家はどのような距離があるのだろうか?しかしながら我々の象徴的存在は
変わらず毛沢東という現実の仮面がある…・ここにパラダイムシフトによる
上手な仮面の被り変えがあるように私は思う。

そして現在の仮面こそが現実の自分、国家なのだと思うのである。現代美術の作家たちは体制批判をしているというよりは、現代中国の現実をそのまま表出していると解釈したほうが実は正確なのではないかと考えているのと同時に、内なる嘘の自分を敢えてさらけ出しているのではないか?とその表現から感じるのである。

毛沢東という像は先述した一人歩きを大きく始めているという
考え方と、現実に即した毛沢東に変質させている。

毛沢東でも今のように考えた!

客観的にはかなり無理があるが、現実はそうなのである。
そうでないという事を大きく噴出させることは、この国では

大嘘つきになる。

しかしいずれにしても

毛沢東の肖像は現在の中国国民にとって現実の仮面なのである。


19世紀にこの人間の固定観念に対する逆説的内面を説明したのが
私はアンソールだったと思うのである。

であるから、まさしくこの普遍的な問題定義は現代美術まで直結し
今尚、表現の中心的な役割を果たしつづけている。

アンソールが仮面の群像の中で自画像をかいている名作があるが

この絵の最大の特徴は


仮面と自画像たる自分が

同質に描かれているということであり

そこから仮面と無表情な人間社会において客観的に
捉えられている自分とが、境界すれすれという緊迫状態
を生み出している。この緊張感から見えるものとは


自分の周りにある種種雑多な仮面こそが

自分であると


強く



訴えかけくる


その絵を前にすると

改めて

今を生きている


自分自身というものに



厳然と向き合おうと私は感じるのである。



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投稿者 junca 23:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | think
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