2008年07月16日(水)
曇天中也
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ある朝僕は空の中に、
黒い旗がはためくを見た。
はたはたそれははためいてゐたが、
音はきこえぬ高きがゆゑに。
手繰り下ろさうと僕はしたが、
綱もなければそれも叶はず、
旗ははたはたはためくばかり、
空の奥処に舞ひ入る如く。
かかる 朝を少年の日も、
屡々見たりと僕は憶ふ。
かの時はそを野原の上に、
今はた都会の甍の上に。
かの時この時、時は隔つれ、
此処と彼処と所は異れ、
はたはたはたはたみ空にひとり、
いまも渝らぬかの黒旗よ。

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